アーカムのとある馬小屋で見たチラシの裏

筆者shibkiが興味、関心、好奇心の赴くままにチラ裏情報を書き綴ります。

TENET(テネット)観賞後私感

こんばんは、shibkiです。

先ほどようやくTENETを観賞してきました。興奮覚めやらぬうちに筆をとります。盛大なネタバレがありますのでご注意下さい。そして所々の細かい説明は端折ります。

まず、この映画を観る上でかかせない要素として下記のモノへの理解が不可欠になります。

 

・【TENET】後述する世界規模の人為的被害を食い止めるべく組織されたCIA内部の機密組織。あるいは特殊部隊と思われる。

・【アルゴリズム】地球規模、あるいは太陽系規模レベルからの時間の逆行を可能にする未来人が開発したアーティファクト

・【回転ドア】通過した物体のみに時間の逆行を付与する未来人が開発したアーティファクト

そしてこれらの装置によって時間の逆行を付与されたものは順行にもどるための措置を取らないかぎり恒久的に時間を遡り続けるのだと思います。人であれば生命活動に必要な呼吸に障害が発生する(肺から酸素が口に向かって吐き出される)ため時間の逆行中は酸素マスクが必要になる(吐き出されるのが酸素ならば吸い込むのは二酸化炭素ということになるが、肺には自然と酸素の供給がなされたところからの呼吸活動なので大丈夫ではないのか?と思えなくもない)

 

物語はオペラ観賞会場での爆弾テロ?を阻止するために突入したCIA特殊部隊の主人公らのアクションから始まります。

その中でおそらくスパイ活動中であった主人公の正体が見破られ、敵組織に拘束されてしまい拷問を受けます。

拷問の中、味方組織に危険が及ぶと察した主人公は毒薬を飲み自決を図ります。が、ベッド上で目を覚まし、見るからに味方組織のお偉いさんから実は先の作戦はテストだったことを告げられ、味方のために毒薬を飲んでみせたことを評価されTENETなる組織へ加入させられます。

そしてTENET内部の科学者の元へ連れてこられた主人公はその科学者から時間を逆行する銃弾と拳銃を見せられます。

ちなみにこの拳銃と銃弾は【回転ドア】を通過した物体であることが後に判明しますが、殺傷能力は通常の拳銃の比ではありません。

通常の拳銃であれば装填→発砲→着弾となるところ、時間の逆行を付与された拳銃では着弾→発砲→装填の順になるため標的に銃口を向けトリガーを半分ほど引いたところですでに標的に穴が空いていることになり、弾速云々ではなく軌道が見えないということになります。これはマトリックスのネオでも避けるのは無理でしょう。

主人公はこの時間を逆行する拳銃の出所を調べるために武器商人宅を相棒と襲撃。そこで出会ったおばあちゃんがTENET内部の者であることがわかり、さらに時間の逆行を可能にしている人物を教わります。

まずはこの人物(時間の逆行を可能にしている人物でこの物語のヴィラン)に接触を図るため、その人物の妻に接触し、弱み(偽の絵画を夫に売った罪によって夫に子供との関係を絶たされてしまうのを恐れて夫に逆らえない関係性)を知り得ます。

主人公としてはどうしても夫に接触を図らねばならない立場なので、この偽の絵画(妻の罪を法的に証明する証拠品)を破壊した暁に夫との自然な接触を取り次いでもらう約束を妻と交わします。

こうして次なるミッション(絵画破壊)を相棒とその仲間で遂行しようとするも、何故か絵画を保管している空港の金庫室で逆行能力を付与された兵士に邪魔され失敗。

しかし失敗の報告をせずに妻に夫との接触を図ってもらいます。その後で絵画が破壊されていないことを知り、妻は主人公への不信感と夫への絶望を感じ夫の殺害を図りますが主人公が夫を助けてしまいます。

主人公としては夫を助けたことで夫の信頼を勝ち得たことになり、その後の作戦をスムーズにできたので結果オーライということになりました。

こうして主人公は夫に仲間あるいは同じ方角を向いている者という認識を植え付け、夫の目的に加担するフリをして陰謀を暴き、阻止することを目論みます。

夫の目的がプルトニウムの奪取ということを知り、先んじて手を打ち、プルトニウムの奪取に成功しますが夫に『先を読まれ』時間を逆行した夫に妻を人質にとられド派手なカーチェイスの果てにプルトニウムを渡してしまいます。

しかし主人公はプルトニウムだと知らされていたものがプルトニウムではない何かであることに気づき、中身を隠してケースを夫に渡します。

ケースを受け取った夫は目的を果たしたと思い込んで暴走する車の中に拘束した妻を残して消えます。

主人公は命がけで暴走する車を止めて妻を救いますが空のケースだと知ってしまった夫組織に拘束され、再び妻を人質にとられケースの中身のありかを吐かされます。その過程で妻は腹部を逆行銃で撃たれ負傷。

これを治療するために相棒と妻と3人で再び絵画破壊の時間に回転ドアを使って逆行します。

ここからまた時間の順行に戻るという過程で序盤の主人公達と逆行状態の主人公達で戦うハメになります。(そう、あの逆行兵士は主人公だったのです)なんとか妻の治療に成功した主人公達ですが、プルトニウムだと思っていたモノが夫の手に渡ってしまったことを解決するべく調べを進めます。

その後、ケースの中身はプルトニウムではなく【アルゴリズム】と呼ばれる回転ドアをスケールした装置の一部であることを知ります。

このアルゴリズムは未来人(どれくらい未来かはわからない)が衰退していく未来の地球に自分達の存続が危ぶまれることを回避するため、地球規模で時間を逆行するという目的のため作ったものです。(衰退する地球のイメージは同監督作品のインターステラーで扱われていた地球のイメージでしょうか?とするとこの映画はCプランにあたる?時間の逆行装置を開発できるというパラレルワールド的な見方が必要か。)

これを開発した未来人の科学者は結局のところアルゴリズムを起動させたところで過去の人類がこの時間の逆行によって呼吸活動ができなくなり全滅すれば『先祖殺し』となり、自分達の存在もパラドックスとなってしまい存在することができなくなることを知りアルゴリズムを9つのパーツに分解し、過去に送りつけて自決してしまいました。

しかし残された未来人はどの道地球の衰退による死滅という結末になるのだから一か八か賭けに出ることにしたのだと思います。

過去の人類に交信と呼ばれる方法で接触を図り、アルゴリズムのパーツを集めさせました。その役目を与えられたのが夫ということになります。

すでに最後のパーツが揃ってしまった今、アルゴリズムの起動を阻止するために主人公らTENETが立ち上がります。旧ソ連核実験施設跡地でアルゴリズムを起動するという情報を得て、起動のタイミングについても突き止めます。

それは末期ガンを患っている夫の脈拍が止まった時に起動する仕組みであり、その夫はそのタイミングを人生で最も幸福であった場所と時(過去)で迎えるつもりでいました。

それぞれ別の場所で起こっているのですが、時間軸は同じであり、アルゴリズムの奪取前に夫の自決を阻止するべく夫のところに妻が差し向けられました。

こうして未来から差し向けられた妻は夫に甘い言葉を投げかけて自決を長引かせようとします。それと同時にアルゴリズム奪取任務にTENET部隊が向かいます。

アルゴリズム奪取は起動までの10分を順行チームと逆行チームで分かれて遂行する作戦です。この順行の10分(TEN)と逆行の10分(TEN)が交わる作戦というのがTENETの由来と思われます。何故ならTENETはこの作戦のためだけに組織されたチームであり、TENと逆さ読みのNETが交差する時間の交わりがこの作品の本質となっているためです。

時間の挟撃作戦により戦況は有利に働きますが、敵の罠によって主人公とその仲間はアルゴリズムの安置されている洞窟内に閉じ込められてしまいます。

後に引けない主人公達はアルゴリズム奪取を目指し洞窟を進みますが、アルゴリズムを目と鼻の先に定めたところで文字通りの障壁に阻まれます。この障壁の外側に主人公、そして内側には味方兵士の死体と敵組織の兵士とアルゴリズムがありました。

金属製の障壁には鍵がかかっており、主人公側からアルゴリズムへのアクセスは不可能であると同時に並行軸で活動中であった妻が夫への嫌悪感を抑えきれず殺害してしまいます。

本来であればこの殺害によってアルゴリズムが起動するはずでしたが何故かせず、さらに障壁の内側にいた味方兵士が生き返る(彼は逆行兵士)なり鍵を外し、敵兵士が主人公に向けた銃弾にその身を犠牲にしてかばったことで死亡します。

その隙に敵兵士をいなし、アルゴリズムを奪取することに成功した主人公でしたが自分を守るため銃弾を受けた味方兵士を見やります。その兵士のカバンには一際目立つストラップがついていました。

その後、アルゴリズムをパーツに分けて主人公と相棒、そしてその仲間でこの時間軸で誰も見つけようのない場所に隠そうということになりました。

しかし相棒はやることがあるとし、仲間にアルゴリズムのパーツを投げやります。主人公が不思議に思い相棒に目をやると、そこにはあのストラップがついたカバンを背負った相棒の姿がありました。

このことで悟った主人公に相棒はすかさずネタばらしをします。相棒はこれからまた過去に逆行し、主人公のために銃弾によって倒れる役目が待っているためいかなければならないことを知っていました。さらにこの作戦の立案者、ひいてはTENETのボスは未来の主人公だと言うのです。これにより主人公は命がけで守られる必要があることも理解し、涙ながら友情に感謝します。

かくして、過去でアルゴリズム奪取を果たした主人公と妻は通常の時間軸に戻ります。しかしそこに序盤で登場したTENETの一員と見られるおばあちゃんがアルゴリズムについての情報を知り得る人物として妻の殺害を目論みますが、主人公が先んじておばあちゃんを殺害します。

というところで物語は終わるのですが、この後についてはやはりノーラン作品ということで観る側が想像に想像を重ねていく部分となりそうです。

アルゴリズムが未来からやってきたという事実がある以上、やはり未来から過去にTENETを送り込む必要があるはずなのですが、ボス自らおばあちゃんを殺害しています。

アルゴリズムの起動さえ阻止すればおばあちゃんの存在は別に用済みになって然るべきですが、殺害するまでのことなのかな?と思ってしまいます。妻を守るためにしても殺害する必要性については謎。観る前に少々お酒を飲んでしまったので思考力が落ちていたため見落としや解釈の間違いがあるでしょう。複数回観たあとでこれらの間違いを自分で訂正するのもまた楽しいのがノーラン作品の魅力です。

話を戻すと、この時点ではTENETのボスが自分であることを知っている主人公はおばあちゃんに指令を下したのも自分であることを知っています。そのおばあちゃんを殺害することで本来の自分の目的に逆らったという見方もできるのかもしれません。

こうなるとその先がえらく違った未来となるので想像が膨らみます。もしかするとアルゴリズムを未来から探させていた人物自身も主人公だったという説などもあり得なくもない。

それこそ本当に第三次世界大戦を防ぐためであったとか…まあ、正直なところこのあたりの解釈には自信がないのでもう一度観てきます。

全てのシーンで時間の順行か逆行か、あるいは過去か現在かわかるようになればもっとしっかりした解釈ができるようになるかもしれません。次回は酸素マスクをしている人が逆行している人という理解を持って観てみます。

そもそもシラフでも難しい映画ではないでしょうか?シーンが変わるたびに過去なのか現実なのかの説明がなかったのも難しくしていると思います。

妻が撃たれた際、何故過去に戻って撃たれないようにする前に治療を目的に時間を逆行したのかも少し釈然としません。

しかし面白い映画だと思います。まだ一度観ただけなのでもう一度くらいは観に行こうと考えています。

もしかすると感想や解釈も変わってくるかもしれません。それがノーラン作品の面白いところですね。

 

追記:色々と考えてみた結果、未来人の科学者が自決する動機として先祖殺しが語られますが、解釈の誤りかもしれません。

正確にはアルゴリズムを開発した未来において酸素マスクをした状態からのアルゴリズム起動であれば先祖殺しにはならず、酸素マスクをすることを許された『選ばれし者』は少なくとも酸素マスクの酸素の供給が可能な分だけ生き残ることはできます。

しかしこの『選ばれし者』となるための殺戮や戦争を回避するためにアルゴリズムを過去へ飛ばしたと解釈するのが自然な考え方になるのではないか?

この解釈で行けば現在でのオーパーツであるアルゴリズムが未来での戦争(第三次世界大戦)を回避するためのキーになる。

そして未来人の目的は未来でのアルゴリズム起動であり、過去での起動ではないことになります。過去で起動すればパラドックスにより未来人の存在が否定されてしまう故です。

となると未来人は過去から未来へとアルゴリズムの転送を目論むのが当然となり、最終盤の洞窟内での行動に信憑性が出てきます。

過去の洞窟内の奥で深い穴にアルゴリズムを埋めることにより未来人がそれを掘り起こすことが可能になります。

見落としも見落としでしょうか…酒飲んで観れる映画ではないですね笑

それと個人的な矛盾点として酸素マスクは見間違いでなければ回転ドアを通過した代物です。ということはタンクに少しずつ液体酸素が蓄積してゆく機構を持つことになるため酸素マスクの機能不全を疑わざるを得ません。まあ、何かしらの方法で回転ドアの効力の有効範囲をいじれたりすれば酸素マスク本来の機能を逆行した者に使うことはできますが…このあたりはご都合解釈でということか?